数学: 『トポロジーの基礎 上』補足(定理1.2.11)

本記事では,河澄響矢『トポロジーの基礎 上』(東京大学出版会,2023年第2刷)の定理1.2.11の証明の修正を行います.(修正案における)記法はなるべく著者のものを尊重します.

修正箇所

訂正を要すると思われるのは,次の部分です(p.23, l.4):

また, x_0, \, x_1 が第一の部分集合から来ている場合は  l([k_0/N, \, k_1/N]) \subset U および  l([k_{m-1}/N, \, k_m/N]) \subset U
であるとしてよい.第二,第三の部分集合についても同様である.

これはうまくいきません.実際,図1のとおりに  x_0, \, x_1 \in X,道  l X開被覆  U, \, V を設定すると,(本文を素直に読む場合) x_0, \, x_1 は第一の部分集合から来ているとするしかありませんが, l( [ k_0/N, \, k_1/N ] ) \not\subset Uです.
一般に, x_0 x_1 U V それぞれに属するかどうかの情報だけで  l( [ k_0/N, \, k_1/N ] ) l( [ k_{m-1}/N, \, k_m/N ] ) U V それぞれに包まれるかどうかを復元できるとは限りません.

図1. 反例

証明の3段目「 \mathop{\mathrm{Ker}} j \subset \mathop{\mathrm{Im}} i」を,本文を差し替えるかたちで修正します.ダッシュ "——" は,その前後が一致する本文を連結に抜き書きし,中間の記載を省略したことを意味します.

修正証明

 H_0(U) \oplus H_0(V) は —— と書くことにする.このとき,補題1.2.2 (3) により  \mathop{\mathrm{Ker}} j \subset \mathbb{Z}( \pi_0(U) \amalg \pi_0(V)) は4つの部分集合

 S_{PQ} := \left\{ [x_0]_P - [x_1]_Q ; \, x_0 \in P, \, x_1 \in Q, \, [x_0]_X = [x_1]_X \right\}, \quad \mathrm{where} \ P, \, Q \in \{ U, \, V \}
の和集合によって生成される.これらが —— 証明すればよい.任意の  P, \, Q \in \{U, \, V\} z \in P \cap Q に対して合同式  [z]_P \equiv [z]_Q \, (\mathrm{mod} \mathop{\mathrm{Im}} i) がなりたつ. P \neq Q のとき  \{P, \, Q\} = \{U, \, V\} で, ([z]_U, \, -[z]_V) \in \mathop{\mathrm{Im}} i だからである.
いま, x_0, \, x_1 \in X S_{PQ} の元にあるものとする. [x_0]_X = [x_1]_X だから,——  l([k_{j-1}/N, \, k_j/N]) \subset V を充たす.二番目の条件より —— がなりたつ.さて,ある  P', \, Q' \in \{U, \, V\} が存在して, l([ k_0/N, \, k_1/N ]) \subset P' および  l( [ k_{m-1}/N, \, k_m/N ] ) \subset Q' を充たす.よって  x_0 = l(k_0/N) \in P' および  x_1 = l(k_m/N) \in Q' だから, [x_0]_{P'} \equiv [l(k_1/N)]_{P'} \equiv [l(k_{m-1}/N)]_{Q'} \equiv [x_1]_{Q'} \, (\mathrm{mod} \mathop{\mathrm{Im}} i) である.したがって, \mathop{\mathrm{Im}} i を modulo として, x_0 \in P \cap P' より  [x_0]_P \equiv [x_0]_{P'}  x_1 \in Q \cap Q' より  [x_1]_Q \equiv [x_1]_{Q'} がなりたつ.つまり  [x_0]_P - [x_1]_Q \in \mathop{\mathrm{Im}} i \subset H_0(U) \oplus H_0(V) となる.これが示すべきことであった. \square

LaTeX: upLaTeXでdvipdfmxが動かなくなったとき

(注意: 特に構成を考えずに書いているので,文章が非常にだらついたり,情報が不十分なままになったりする可能性があります.また,筆者は LaTeX 等に関する技術的な話に明るくありません.)

背景

筆者は Windows 用 TeXworks (TeX Live 2024) を利用して,upLaTeX + dvipdfmx で文書を作成している.
あるとき mktexlsr したところ*1,upLaTeX が日本語文書の出力に失敗した.実験してみると,次のことがわかった:

  • pLaTeX + dvipdfmx は問題なく動作する.
  • 日本語を含まない(英文だけの)文書は upLaTeX + dvipdfmx でも出力できる.
  • dvi ファイルまでは問題なく出力できており,pdf ファイルが出力できていない: 問題の直接の原因は dvipdfmx にあるらしい.

また,TeXworks には次のことを言われた:

mktexpk: could not locate a virtual/physical font for tfm "upgbm-h".

とか

mktexpk: could not locate a virtual/physical font for tfm "uprml-h".

とか*2.この問題を解決する.

解決

まず,dvipdfmx.cfg を探し出す.筆者の場合は

C:\texlive\2024\texmf-dist\dvipdfmx\dvipdfmx.cfg

にあった.この一番下の方に,

% the following file is generated by updmap(-sys) from the 
% KanjiMap entries in the updmap.cfg file.
f kanjix.map
% minimal example for Chinese and Korean users
% improvements please to tex-live@tug.org
f ckx.map

と書かれている.この "f kanjix.map" の直後に,次の一行を追加する.

f uptex-haranoaji.map

これで問題は解決される(はずである).

補足

TeXworks に言われた言葉のうち "upgbm-h" とか "uprml-h" からわかるように,筆者はフォントの設定をデフォルトのまま TeXworks を使用している.そのとき使用しているフォントはコマンドプロンプトから

> kanji-config-updmap status

で調べられる [1] .筆者の場合は,次の結果が返ってきた:

CURRENT family for ja: haranoaji (variant: -04)
Standby family : bizud
Standby family : haranoaji
Standby family : ipa
Standby family : ipaex
Standby family : ms
Standby family : yu-win10

使用しているフォントは「原ノ味フォント」である.
ところで,kanjix.map の場所は,コマンドプロンプト

> kpsewhich kanjix.map

と訊くと返ってくる.筆者の場合は

c:/texlive/texmf-local/fonts/map/dvipdfmx/updmap/kanjix.map

だった.この場所に kanjix.map を探しに行って中身を読んでみると,なんと "upgbm-h" も "uprml-h" 書かれていない.彼らはどこにいるのかというと,また別のファイル,例えば uptex-haranoaji.map の中にいる.このファイルは筆者の場合

c:/texlive/2024/texmf-dist/fonts/map/dvipdfmx/ptex-fontmaps/haranoaji/uptex-haranoaji.map

にあった.状況から察するに,このとき dvpidfmx は kanjix.map を見るばかりで,本当に必要な(例えば)uptex-haranoaji.map を発見できていなかったのだろう.実際,dvipdfmx.cfg にuptex-haranoaji.map を書き込んだ結果,問題は解決された.

余談

解決策は,[2, 3] に行き当たって思いついた.
この問題に際して,TeX Live を再インストールしたものの,それでも解決しなかった.TeX Live は数年前(2021?)から使っており,kanjix.map は texmf-local に存在しているので,そのときのものが残ったままだったのかもしれない.しかしながら,TeX Live 2024 自体は少し前から使っていたので,kanjix.map における件の欠落が今になって発火するのは不自然な気もする.mktexlsr が着火材になったのだろうか?
なお,mktexlsr は新しい sty ファイル  S を texmf-local に配置したことから必要に駆られて実行したのだが, S が悪さをしたとも考えられる. S 中では expl3 を扱っているのだが,それが原因なのだろうか?
この解決策は逆用できることがあるらしく, dvpidfmx.cfg に追加した

f uptex-haranoaji.map

コメントアウトすると,(少し時間が経った後,または  S を使用すると)問題が再発する.

参考文献

[1] https://ctan.math.washington.edu/tex-archive/fonts/ptex-fontmaps/kanji-config-updmap.pdf
[2] 名月記: texlive(w/ texshop)環境:dvipdfmxが通らなくなったときの対処
[3] dvipdfmxでpdfに変換できない - I am a wannabe.

*1:これが直接の原因だったのかはわからない.「余談」も参照.

*2:これは「ログの表示」の一番下から少し上の部分に出てくる.

数学: 『曲率とトポロジー』正誤表(作成中)

本記事は,河野俊丈『曲率とトポロジー 曲面の幾何から宇宙のかたちへ』(東京大学出版会,2021年初版)の記述のうち,修正を要すると思われる部分を(発見できた範囲で)列挙したものです.軽微な修正は *印 で明示しました.論理的な誤りは掲載しましたが,それ以外の部分について修正を要すると思われるかどうかは,掲載者の一部独断によります.実際に修正を要する部分の全部は,ここに掲載されたものには限らないかもしれません.

次の部分について確認しました: 第0-3章.

(次の部分は現在確認中です: 第5章.)

見出しは「ページ数: その概要」で統一しています.形式は原則,該当部分とその訂正例の併記とします.別行立ての数式はそのものだけを掲載します.それ以外は,前後の部分もあわせて掲載します.

正誤表の作成は,本書の自主ゼミに参加した友人の協力にもよります.この場を借りて感謝申し上げます.

第1章 曲線の曲率

p.25: 例1.3.1,螺旋の捩率

該当部:  \displaystyle{\tau = \frac{a^2+h^2}{h}}
修正案:  \displaystyle{\tau = \frac{h}{a^2+h^2}}

第2章 曲面の計量と曲率

p.37: 式(2.3.3)

該当部:  \| \boldsymbol{a} \times \boldsymbol{b} \|^2 = \det M \, {}^t \! M = \langle \boldsymbol{a}, \boldsymbol{a} \rangle \langle \boldsymbol{b}, \boldsymbol{b} \rangle - 2 \langle \boldsymbol{a}, \boldsymbol{b} \rangle
修正案:  \| \boldsymbol{a} \times \boldsymbol{b} \|^2 = \det M \, {}^t \! M = \langle \boldsymbol{a}, \boldsymbol{a} \rangle \langle \boldsymbol{b}, \boldsymbol{b} \rangle - \langle \boldsymbol{a}, \boldsymbol{b} \rangle^2

*p.50: 脱字

該当部: 擬球はトラクトリスを  x 軸の周りに回転して得られる曲面である.
修正案: 擬球はトラクトリクスを  x 軸の周りに回転して得られる曲面である.

p.51: 命題2.6.1,証明中の曲率

該当部:  \displaystyle{ K = \frac{f'g'' - f''g'}{f^2} }
修正案:  \displaystyle{ K = \frac{(f'g'' - f''g')g'}{f} }

第3章 曲面上の幾何学

*p.60: 細字

該当部: 曲面上の曲線  \boldsymbol{c}(t) = p(u_1(t), u_2(t)) を考える.
修正案: 曲面上の曲線  \boldsymbol{c}(t) = \boldsymbol{p}(u_1(t), u_2(t)) を考える.

*p.69: 句読点

該当部: で定める,これは  U 上の  2微分形式である.
修正案: で定める.これは  U 上の  2微分形式である.

p.72: 写像の取り違え

該当部:  \omega_{31} \wedge \omega_{32} S^2 への写像  \gamma \circ \boldsymbol{n} の向きまでこめた面積要素を表す.
修正案:  \omega_{31} \wedge \omega_{32} S^2 への写像  \gamma \circ \boldsymbol{p} の向きまでこめた面積要素を表す.

*p.80: 例3.6.2,衍字

該当部: ベクトルを  \boldsymbol{v}_1 が辺  BC の接線方向となす角度は  \pi - \beta となる.
修正案: ベクトル  \boldsymbol{v}_1 が辺  BC の接線方向となす角度は  \pi - \beta となる.

第5章 双曲幾何学

*p.97: 助詞の取り替え

該当部: 加速度ベクトル  \gamma''(t) \gamma(t) における  H_+ の任意の接ベクトルとのミンコフスキー内積 0 となることと定義する.
修正案: 加速度ベクトル  \gamma''(t) \gamma(t) における  H_+ の任意の接ベクトルとのミンコフスキー内積 0 となることと定義する.

p.99: ポアンカレ円板の計量の3本目

該当部:  \displaystyle{ \left\langle \frac{\partial \boldsymbol{p}}{\partial r}, \frac{\partial \boldsymbol{p}}{\partial r} \right\rangle_m = \frac{4r^2}{(1-r^2)^2} }
修正案:  \displaystyle{ \left\langle \frac{\partial \boldsymbol{p}}{\partial \theta}, \frac{\partial \boldsymbol{p}}{\partial \theta} \right\rangle_m = \frac{4r^2}{(1-r^2)^2} }

*p.101: 助詞の位置

該当部: 複素数 z がともに 0 ではない複素数 z_0, z_1 によって
修正案: 複素数 z がともには 0 でない複素数 z_0, z_1 によって

動画(雑記): 動画編集覚書

動画編集に関するメモを,特に体系立てずに残していきます.
自分用のメモなので,前提が違ったり,一般化できない内容もあると思います.
随時更新.

(用語)

  • ノート: 動画用に作成・公開されているpdfファイル.
  • テキスト: 動画中の人物が発話する文字列.
  • 文章: 動画中に画像として表示される文字列等.

一般論

今すぐ手を動かせ

人間は,何かと理由をつけて物事への着手をためらいがちな生き物である.
面倒そう・進捗を生めなさそうな作業であっても,やり始めると案外進む.
こんなものを読んでいる暇があるなら,とっとと手を動かすべきである.

「見たいものが無い」のは強いモチベーションになる

私が見たいものは,将来他の誰かも見たがる.
知は共有するべきである.


ノート関連

ちゃんと手を動かさないと間違える

ノートの行間は,作った本人であろうと埋めた方がいい.
ノートの作成中に間違いに気づくことすらある.
人間は割とすぐ間違える.

喋る順番は考えた方がいい

「Aの話題,Bの話題,またAの話題,またBの話題……」と飛び飛びにするよりも,同じ話題はなるべく繋げた方がよい.
複数の話題を短時間で行き来すると,視聴者は疲れるし,内容もあまり定着しない(だろう).
内容の再配列をためらうべきではない.

テキストは割といつでも書ける

話すべき内容の具体的な形がテキストなので,内容がある程度固まってさえいれば,夜中であろうとテキストは書ける.
テキストの誤字訂正は(どうせ後で音声として出力するので)修正が楽である.

テキストは何回も音読するべきである

テキストは最終的に音声としても出力される.
音で聞いて違和感があると,本質的な内容の集中が削がれてしまう.
アクセントやイントネーションの調声にも役立つので,テキストは音読するべきである.


調声関連

調声はデフォルトを基準に,しかし手は抜かない

すべてのアクセントやイントネーションを調声し始めると,工数が爆発的に増え,動画が完成しない(か異常に疲れる).
合成音声の学習データは(基本的に)プロの声なのだから,頼った方がいい.
しかし,デフォルトは絶対ではないので,明確な誤りは一つ一つ丹念に潰す.
工数のために最低限の視聴体験までもを損なってはならない.

音声を何回も聞き直すべきである

全部をAviUtl上に出力してから後で再編集するとなると,非常に手間である.
動画にするときどのタイミングで何の文章を表示するか/消すか を考えながら聞くとよい.

(母音で始まる)記号の直前は一瞬休む

エス」「エックス」「アルファ」などの直前に0.10s未満の小休止を入れると,聞き取りやすい.

連体詞や補助動詞の周辺は調声箇所をまとめた方がいい

文字数の少ない単語は前後の単語と繋げた方が,アクセントをデフォルトで運用しやすい.
工数が減るので便利である.


映像関連

文章は原則コピペするべきである

書き写すと,間違えてもなかなか気づけない.
コピペ元であるノートは,かなり校正された後のもの(なはず)であるから,ある程度信用してよい.
一応,都度読み直して矛盾等ないことを確認した方がいい.

文章は削除によって作るべきである

ノートの文章はすべて完全文で,動画中の文章は基本その省略形ばかりである.
また一から書くとミスるので,ノートを信用した方がいい.
書き直しは最小限に抑え,それでも入力しなければならないところは,復唱しながらやった方がいい.

文章も音読するべきである

文章はただ動画に表示されるだけであり,量もかなりあるので,音読なしには誤字脱字のチェックが極めて困難である.
文章は動画のデータとは別でまとめてあるから,それを順番に音読する.

夜中に文章を打つべきではない

ミスる.

夜中に動画を作るべきではない

後で見直すと,編集した箇所全体でミスが一様に分布している.
ミスの修正には,実は修正だけではなく発見の作業も必要なので,余計に体力を持っていかれる.
動画そのものは,注意力を保てる昼間に作るべきである.

夜中に動画チェックをしない方がいい

夜中に見ても,動画のミスは(恐らく)昼間ほど発見できない.
注意力を保てる昼間にチェックするべきである.

(後で実験)編集中の動画はなるべく短い間隔で出力してみる

節ごとに出力したとしても,数十分とかが余裕で持って行かれる.
5分以内ごととかに出力した方が,最終的な編集時間を削減できるのではないか?
Divide and Conquer は偉大.

BGMは最後に入れる

途中のテキストが変更になったりすると,本当に困る.
どうぜ再生位置とかフェードの設定は固まっているので,BGMは最後に入れればいい.

SEを入れるのも多分最後でいい

BGMと違って,音を切ったりしなくていいので,これは正直どっちでもいい.
それでも,多分90秒くらいは作業時間を短縮できる.

LaTeX(雑記): numberwithinの再設定

(独自の)パッケージの中でカウンター C の深さを設定している状況において,文書の .tex ファイルのプリアンブルにて C の深さを浅く再設定すると,見た目だけが再設定されて,カウンターがリセットされるタイミングはもとの深さを維持するようである.

例えば,definition カウンターを,

  • パッケージで subsection に設定し,
  • プリアンブルで section に再設定すると,

出力されるカウンターは section.definition の形式になるが,リセットされるタイミングは subsection のままである.

しかしながら,同じく definition カウンターを,

  • パッケージで section に設定し,
  • プリアンブルで subsection に再設定すると,

出力されるカウンターは section.subsection.definition の形式で,subsectionでもリセットされるように(正常に)動作する.

解決法がわからないので,カウンターを浅く再設定したい場合は,とりあえずパッケージを修正するか諦めるかしかない.